さまざまな国際貢献 (2012年7月)

日本政府は「生物多様性条約」第10回締約国会議で合意された「愛知目標」の達成や、「国連生物多様性の10年」を推進する立場から、生物多様性の保全と持続的利用に関する国際的な取り組みに積極的に貢献しようとしています。S-9 プロジェクトでは、各チームの研究成果を生かした国際貢献を行います。

現在、熱帯低地では急速に森林が失われています。このため、熱帯林の消失にともなう種の消失速度を評価することが重要課題です。統合チームでは、種・遺伝子チームと協力して、アジア熱帯低地における植物種多様性の観測をネットワーク化し、その総合評価を進めています。(詳しいことは、種・遺伝子チームの研究の紹介「熱帯の森林における植物の多様性評価」を御覧ください)

これまでの研究から、高さ4m以上の樹木の種数(500m2あたり)は、標高1000m前後で最大になることがわかりました。低木・草本などを加えた植物総種数の点でも、500m~1000mの標高帯で種多様性がもっとも高いようです。アジア熱帯では、低地林がほとんど伐採され、 500 m~1000 mの標高帯でも伐採が進んでいます。今後は、特に種多様性が高い地域を特定し、保全に向けての提言を行う予定です。

こうした研究成果は、さまざまな形で国際貢献へとつなげていきます。特に、以下で説明するGEO BON/AP BON には力を入れています。


「地球観測に関する政府間会合 生物多様性観測ネットワーク」(GEO BON)

地球規模での生物多様性観測システム(観測ネットワークとデータ共有システム)の確立を目標として、「地球サミット」の合意の下で2005年にスタートした国際メカニズムです。S-9 プロジェクトでは、GEO BONに呼応して組織された「アジア太平洋地域生物多様性観測ネットワーク」(AP BON)の強化を通じて、 GEO BONの発展に貢献します。

アジア太平洋地域で行われているさまざまな生物多様性観測をネットワーク化するために、S-9 プロジェクトのメンバーが中心となって、英文の論文集を出版しました。この本を見れば、アジア太平洋地域のどの国で、どのような観測が行われ、どのような事実が明らかにされているかを概観することができます。


2011年12月2-4日に東京で開催された第4回AP-BON(アジア太平洋地域生物多様性観測ネットワーク)ワークショップでは、「AP-BONの到達点と課題」と題して基調講演を行うとともに、2015年までのAP-BON実行計画の策定に貢献しました。

2012年4月3-4日に東京で開催された第5回GEOSS-AP(全球地球観測システム・アジア太平洋地域)シンポジウムでは、生物多様性セッションの運営を担当し、地上観測とリモートセンシングを統合した生物多様性観測のアジア・太平洋地域における到達点と課題についての検討を行いました。



S-9 プロジェクトでは、GEO BON/AP BON の他にも、以下の国際プログラムへの貢献を目指しています。

「生物多様性条約」(CBD)
2014年に予定されているGBO4(国際生物多様性概況第4版)にむけて、地球規模での生物多様性の変動を科学的に評価する事業に貢献します。

「生物多様性・生態系サービスに関する政府間プラットフォーム」(IPBES)
生物多様性版IPCCとして、国連総会で承認され、2012年に正式に設立されたアセスメント機構です。「ミレニアム生態系アセスメント」を継承し発展させる役割が期待されています。このIPBESのアセスメントに向けて、S-9 プロジェクトではアジア・太平洋地域での生物多様性変動に関する科学的基盤の強化をはかります。

「生物多様性国際研究プログラム」(DIVERSITAS)
上記の3つの国際プログラムと緊密に連携・協力しながら、生物多様性研究の発展をリードしている科学者の集まりです。IPBESは科学者が発表した研究成果にもとづいてアセスメントを実施します。 DIVERSITASは、アセスメントに必要な科学的研究のコンセプトやビジョンを提示し、科学的な生物多様性研究と、生物多様性に関する政策を橋渡しする役割を果たしています。S-9 プロジェクトでは、 DIVERSITAS科学委員会に参加し、国際討議に加わるとともに、コンセプト論文や意見論文の出版に貢献しています。




文責 矢原徹一(九州大学)
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