森林チームより(2014年2月)

ボルネオの熱帯林の変化を人工衛星から見る


東南アジア、中南米、中部アフリカなどに広がる熱帯林は、高温多雨な気候に育まれ、巨大なバイオマスと高い生物多様性を保持しています。大気中で増加する二酸化炭素の成分である炭素を隔離していることで、気候変動を制御しているとともに、貴重な生物や遺伝資源の宝庫でもあり、地球環境を保全する意味から要となっています。一方近年では,熱帯林がプランテーションとして開発され(1),そこで生産されるパーム油や工業原料などが現地社会の重要な経済的基盤となっているのも事実です。このような様々な価値観に基づいて熱帯林の重要性を検討するためには,まず観測によってその分布や変動を科学的手法で明らかにし,議論のための客観的な情報や理解を作ることが必須です。人工衛星は広大な熱帯林を宇宙から定期的に観測し,データを送ってきます。そのデータを分析することによって,ボルネオをはじめ,東南アジアの熱帯林が人為的に変化してきた様子を知ることができます。

 

図1 ボルネオ島サラワクのオイルパーム・プランテーション。左:2012229日撮影。右:201231日撮影。

2に衛星「だいち(ALOS: Advanced Land Observing Satellite)」のセンサーAVNIR-2 (Advanced Visible and Near Infrared Radiometer type 2)によって撮影された、ボルネオ島サラワクの大地を例示しました。地図の中央部から西部にかけて広がる低地にはっきりと見える直線的な幾何学模様は、道路で区画されたオイルパーム・プランテーションです。地図の南東部は丘陵地帯であり、オイルパーム・プランテーションが見られるものの、道路は不規則に曲がりくねっています。衛星データからは、このようにオイルパーム・プランテーションとして開発された地域の分布を広域で知ることができます。さらに、複数の時期に撮影された画像を比較すれば、その差異から各地で開発がいつ行われたのかも知ることができます。



図2 衛星「だいち(ALOS)」のセンサー「AVNIR-2」によって観測されたボルネオ島サラワクの大地(Niahの南方)(2009年10月19日)。雲が白い塊となって見えている。

3には、米国の衛星TerraAquaに搭載されたセンサーMODIS (Moderate Resolution Imaging Spectroradiometer)による画像をボルネオ島サラワクについて2003年から2011年までの各年において集め,植生指数(GRVI: Green-Red ratio Vegetation Index)が低かった日の発生率を示しました。植生指数が低いということは、緑の植生が少ないことを意味し、森林が伐採され地面が見えたような場合に対応しています。図示されているように、毎年のように植生指数が低い率が高い地域が分布しており、さらにその分布は年によって異なっていることが分かります。こういった情報から、各年における伐採地域を推定することが可能となります。さらに、伐採された時期が分かれば、その後そこに栽培されるプランテーションの樹齢も推定でき、生態系機能を評価する際の基礎的情報となります。



3 サラワク中部の2003年から2011年までの各年において,植生指数(GRVI)が低かった日の発生率。衛星TerraAquaのセンサーMODISのデータ(500m×500m)を元にした。(永井信による)



サラワクでは、オイルパームのほかにアカシアもプランテーション栽培されています。生物多様性や生態系機能を正確に評価するためには、両者を区別することが必要となってきます。しかし、アカシアはオイルパームと比べて、樹冠の形や色が自然林や二次林と似ているので、衛星データから区別することが困難といわれてきました。これに対して、我々は挑戦的な研究を行ってきました。図4に「だいち」のAVNIR-2の画像を用いて、アカシアとオイルパームを区別して行った土地被覆の分類結果を示しました。分類精度は満足とは言えませんが、両者を分類する手法の見通しが立ってきました。


図4 衛星「だいち」のAVNIR-2のデータを使った、サラワクにおけるアカシア(Acaia)とオイルパーム(Oil palm)、および自然林(Natural forest)などの分類の試行結果。(Hadi Fadaeiによる)


文責 鈴木力英(海洋研究開発機構

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