統合チームより (2012年8月)

東南アジア熱帯林の消失と回復への取組み


世界全体を見回してみると,森林面積が減少傾向を示している地域もあれば,増加傾向を示している地域もあります.東南アジアの熱帯林ではどこでも一様に減少傾向にあるのかといえばそういうわけではありません.たとえばFAOのデータによると,インドネシアやカンボジア,ミャンマーでは,1990年から2010年にかけての年間森林減少率が非常に大きいですが,一方でタイはそれほど森林減少していませんし,ベトナムやフィリピンにいたっては増加傾向を示しています(図1). 私たちは,消失しつつある国々と回復しつつある国々において消失・拡大要因とその歴史的な過程を明らかにし,整理することで,現在の消失速度を緩和するとともに森林面積を拡大してゆく要因の分析を進めてゆきます.


図1.東南アジア各国の森林減少率(FAO 2010).

森林消失にかかわるさまざまな要因はそれぞれの地域が抱える歴史によって異なります.たとえば現在調査中のカンボジアでは,長く続いた内戦の時期に森林管理が手薄だったために森林消失が起こったようですし,現在では違法伐採とゴム園の造成などが森林消失の要因として挙げられることがわかりつつあります.また別の地域では森林火災やアブラヤシのプランテーションが大きな要因として挙げられます.

図2.カンボジアにおける違法伐採現場と若いゴム園.

森林減少をもたらす要因は地域によって異なりますが,直接的に森林減少に寄与する直接要因とそれを誘導している間接要因に大きく分けることができます.直接要因としては商業用・薪炭・材木などを含めた木材伐採や農地の拡大,道路網構築などによるインフラの拡充などが挙げられます.これらを誘導する間接要因としては人口の増加や国際的な農林産物価格変動などの経済要因,技術革新や林業政策などが挙げられます.これらのさ
まざまな要因が絡み合って現在の熱帯林消失を導いているからこそ,それらを解きほぐすのは非常に難しいことです


図3.熱帯林消失の直接要因と間接要因(Geist & Lambin 2002を改変)

私たちが森林回復を助ける取り組みを整理してみたところ,いくつかの種類があることがわかりました. グローバルな取り組みとしては,生物の多様性に関する条約(CBD)や気候温暖化枠組み条約(FCCC)に含まれているクリーン開発メカニズム(CDM)とREDD(森林減少・劣化から温室効果ガス排出削減),FSC(森林管理協議会)と呼ばれる森林認証制度などが挙げられます.CDMやREDDは,熱帯林を伐採することによって換金される資源ではなく,維持・拡大・保全することによって自分たちの利益につながる仕組みとして,発展途上の熱帯諸国に経済的なインセンティブを与える仕組みとして成立します. その他にも国スケールの取り組みとしては,保護区や国立公園の設定や,森林伐採や木材の輸出を禁止,すでに伐採されてしまった場所の再森林化を促す政策などの取り組みがなされています. また,森林の保全のためになされるこれらの取り組みが森林と暮らす人々から乖離してしまっては元も子もありませんから,地域コミュニティにもとづく天然資源管理の枠組みも試みられつつあります.

このようなグローバル・ナショナル・ローカルな取り組みによって森林減少から回復への推移を遂げることができるはずです.しかしながら,どんなに優れた政策であったとしてもそれが正しく実行・履行されなければ森林は保全されないでしょうし,汚職や違法伐採でルールが守られなければ意味をなしません.だからこそ,さまざまな立場の人々が森林回復を望むことが非常に大切になってきます.今後は東南アジア諸国の森林消失・拡大の事例をより広範囲に調べることで,森林回復のための効果的な取り組みを提案してゆきたいと考えています.

文責 辻野亮(京都大学)

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