要旨_02

生物多様性を守るためのDNA分析

陶山 佳久(東北大学大学院農学研究科)

DNAの分析によって得られる生物情報を適切に用いれば、生物多様性保全に遺伝学的な視点から大きな貢献を果たすことができます。今回私たちが開発した新しいDNA分析方法では、あらゆる生物を対象として、ごく短期間で膨大な遺伝的情報を得ることができます。本講演では、このようにして得られた情報を生物多様性の保全対策に用いることのできる例として、絶滅危惧植物レブンアツモリソウの研究例を紹介します。

この種は、北海道の礼文島のみに自生するラン科の美しい植物です。島内の自生地は大きく北と南に分けられ、これらは遺伝的に区別できないと考えられてきました。しかし、新手法を用いて十分な情報をもとに解析してみると、北と南の集団は、遺伝的に明確に異なることが明らかになりました。つまり、これらを別々の単位として保全することが、この種全体の多様性を守るために必要であることがわかりました。

さらに興味深い解析も可能です。たとえば、実際には数えることのできない現存繁殖個体数を推定することができます。また、過去の集団の個体数、その増減、地域集団が分化した年代など、過去の集団の履歴も推定することができるのです。さらに、近縁種との遺伝的な関係、雑種の同定、人為的に移植された株の由来特定なども可能です。これらの情報は、保全上重要な基礎情報として活かすことができます。

生物多様性には、これまで認識されないままに失ってきた多くの部分があると考えられます。DNA分析によって得られた情報を適切に用いることで、より効果的な保全対策を講じることが必要です。

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