要旨_03

森林の生態系機能を可視化する:樹木の属性を用いたアプローチ

黒川 紘子(国立研究開発法人森林総合研究所)

世界の陸地面積のおよそ3割を占める森林は、私たちにさまざまな恵みをもたらしてくれます。例えば、木材や燃料の供給や大気中の二酸化炭素の吸収による気候の制御、水の保持・浄化や土砂災害の防止が挙げられます。さらに、他の生き物の餌や住処になったり、私たちには楽しみや安らぎも与えてくれたりします。このように人間が自然から得ている恵みを「生態系サービス」と呼び、生態系サービスを下支えしている生態系の働きを「生態系機能」といいます。二酸化炭素などの温室効果ガスの濃度上昇に伴う気候変動や伐採や農地化といった土地利用変化による森林減少・劣化が進む中、森林の生態系機能の現状を定量的に評価し、将来の変化を予測することは、生態系サービスの適切な維持・管理手法の開発に不可欠です。

私たちはこの5年間、森林の生態系機能を広域で評価する一つの手法として、形質に代表される樹木の「属性」に着目してきました。世界でおよそ26万種あると言われる植物は、その大きさや形、葉の特徴などがさまざまに異なります。近年の研究の結果、それらの違いが植物の炭素固定能など、生態系機能に関わる重要な植物機能の違いにつながるということが分かってきました。私たちはそのような樹木の属性データを、日本国内から現在も大規模な森林減少・劣化が進行する東南アジアにかけ、約1200種を対象に収集し、森林の生態系機能を広域で地図化する試みを行ってきました。本講演では、日本の全国や地域レベルで描くことのできる高精度な生態系機能地図や、日本や東南アジア地域の森林生態系機能おける土地利用変化や気候変動の影響を示した地図などをご紹介します。

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