要旨_04

日本の陸水域の中で、保護を優先すべき場所はどこか? 

高村 典子(国立環境研究所生物・生態系環境研究センター)

陸水域は地球上の表面積の0.8%を占めるに過ぎません。しかし、この小面積に既存の動物種数の9.5%、全脊椎動物種数の35%が生息しています。その中には固有種も多く含まれ、タンガニイカ湖、マラウィ湖、ビクトリア湖では淡水魚種の90-96%が固有種です。陸水生態系の生物種の分布は、その成因、地史、上流から下流といった河川のヒエラルキー構造とも深く関係し、多くの淡水種は移動分散能力が低いのです。淡水種のこうした特徴はそれらが気候変動や人為的なインパクトに極めて脆弱であることを意味しています。

一方で、陸水域は多様な生態系機能を通して、単位面積当たりに換算すると人々への恩恵が最も高いとされる生態系です。安定した良質の水の供給は、人々の安全面や災害防止という観点から社会経済の成長期には特に重要視されましたが、水は偏在するという特質を持つため、陸水域はすでに大きな人為的な改変を受け、生態系への負の影響が極めて大きいとされます。さらに、気候変動による今後の利用や撹乱の増加等も想定されるため、陸水域の保全・保護の効果的な実施は重要な課題となっています。

本プロジェクトでは、日本の河川、湖沼(琵琶湖)、湿地、ため池等を対象として、生物多様性評価や相補性解析を実施することで保護を優先すべき場所の選定を試みました。さらに、生物多様性を減少させる駆動因を解析しました。評価には河川水辺の国勢調査、文献、博物館情報、研究者手持ちデータの提供、新たな調査などの生物データを利用しましたが21世紀になってからのデータ不足が深刻でした。

Comments