要旨-06

「アジアの生物多様性アセスメント:IPBESへの貢献と今後の課題」

矢原 徹一(九州大学大学院理学研究院)

生物多様性・生態系サービスに関して継続的にアセスメントを実施する機関として、IPBESが2012年に設立されました。私の講演では、環境省S9プロジェクト(2011-2015年度)のIPBESアセスメントへの貢献と、今後の課題について紹介します。

IPBESではアセスメントの新たな枠組みを発表しましたが、この概念図に自然共生(Living in harmony with nature)が書き込まれているのは、日本からの貢献です。また、枠組みについての論文(Diaz et al.2015)にも自然共生の概念が書き込まれています。

現在進められているアジア太平洋地域のIPBESアセスメントにおいては、生物多様性・生態系サービスの現状とトレンドの評価について、S9の成果が生かされつつあります。その具体例として、アジア太平洋地域における森林面積の増減のトレンドとその駆動要因、アジア太平洋地域における植物ホットスポットの特定についての研究成果を紹介します。

アジア太平洋地域における生物多様性の変化の中で、熱帯林の減少はきわめて深刻な問題です。熱帯林の減少速度がもっとも大きいインドネシアでは、生物多様性損失が深刻であるのみならず、大規模な森林火災による社会的な被害が深刻化しています。その背景には急速なアブラヤシ農園やアカシア・ユーカリの植林地の拡大があります。一方で、日本はこれらの農園や植林地から生産されるパーム油やコピー用紙を大量に輸入しています。日本での消費活動を通じて熱帯林を守ることに貢献する仕組みを工夫する必要があります。このような対策を提案することが、IPBESにも貢献できる今後の重要課題です。

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