[S9-1-4] アジア規模での生物多様性総合評価と自然共生社会への政策提言

このサブテーマでは、以下の4つの目標を掲げて研究開発を進めています。

①  アジアの森林減少・劣化にともなう種・系統・機能多様性損失を総合的に評価する手法を開発する。

② 各公募領域・サブテーマから得られる成果をもとにアジア規模での生物多様性総合評価を行い、アジア各国における生物多様性保全・持続的利用を推進するために必要な計画・目標・指針を提案する。

③ 生物多様性保全対策が成功・失敗する条件を予測できる社会/生態系結合動態モデルを開発する。

④ 各公募領域・サブテーマが行う評価・解析における統計的な手法を検討し最適な手法を開発する。

これら4つの目標に沿って、以下の研究開発を進めています。


(1)種・系統・機能多様性の総合評価

テーマ2では種・遺伝子多様性を、テーマ3では生態系サービス・機能を対象に評価手法の開発とアジア地域への適用を進めています。テーマ1サブテーマ4ではテーマ2・3で得られる研究成果を総合し、以下の課題に取り組んでいます。

(A)種多様性・系統多様性・機能多様性の各評価をもとに、アジアの森林減少・劣化にともなう種・系統・機能多様性損失を総合的に評価する。

テーマ1サブテーマ3では、公募領域2で得られる植物種の分布データをもとに、現在の多様性が高いにも関わらず、将来的にその著しい低下が予測される保全のホットスポットを特定します。しかし、このような種のホットスポットが、森林の生態系サービス・機能が高い地域と一致するとは限りません。このような不一致を考慮するために、複数の指標による総合評価法を開発します。

(B)絶滅危惧種のリスト・分布・形質情報をもとに、絶滅危惧種の生活史をいくつかのタイプに分類し、保護すべき環境や保護方法を提言する。

絶滅危惧種と普通種の形質を比較することにより、どのような形質をもつ種が高い絶滅リスクをもつのかを評価します。また形質の特徴から、個々の絶滅危惧種がどのような環境に適応しているかが推定し、保護すべき環境の提案につなげます。

(C)多様性指標に基づくモデル(A)と、絶滅危惧種の保全に基づくモデル(B)の両者を利用し、保護対策の優先順位決定等の政策的要請に応える。

(A)(B)で開発したモデルを日本およびアジア諸国に適用し、複数の指標による総合評価を行います。


(2)アジア規模での生物多様性総合評価とその成果にもとづく政策提言

 テーマ1の各サブテーマから得られる成果、およびテーマ2-5での研究から得られる成果をもとに、アジア規模での生物多様性総合評価を行い、アジア各国における生物多様性保全・持続的利用を推進するために必要な計画・目標・指針を提案します。また、本研究の成果がアジア規模での政策提言・保全対策にむすびつくように、アジア各国の機関・研究者間の連携を推進します。具体的には、AP-BON(アジア太平洋地域生物多様性観測ネットワーク)に参加する各国の研究機関・研究者に対して研究成果(とくに予測・評価の結果)を随時提供します。また、アジア各国の研究者を招いて国際ワークショップを開催し、研究開発の目標・計画・方法・成果を共有し、可能な限り共著論文として研究成果を公表します。

 さらに、本研究の成果が地球規模での評価・政策提言・保全対策にむすびつくように、DIVERSITAS(生物多様性国際研究プログラム), GEO BON(GEO 生物多様性観測ネットワーク), 生物多様性条約事務局, GBIF, ILTER, IUCNおよび海外の指導的研究者との連携を推進します。


(3)社会的要因を考慮に入れた生物多様性保全の総合モデル

 これまで生物多様性保全に関する研究の大部分は、種や群集、生態系の仕組みを理解すること、つまり自然科学的な研究に振り向けられてきました。他方で環境経済学や環境社会学における研究は、生物多様性の価値を評価するための手法・モデルを開発してきましたが、これらのモデルでは自然系独自のダイナミックスを単純化していました。両者を統合し、生態系の変動を示すダイナミックスと人々の社会・経済的選択のダイナミックスとが結合した系の挙動を明らかにするために、社会/生態結合動態モデリングの開発を進めます。


(4)生物多様性評価手法の統計学的検討

 社会的な要因も考慮して生物多様性保全の方策を立てるためには、統計学的な基盤に立って、生物多様性を評価する手法を確立することが必要です。そこで、他のテーマ・サブテーマが行う評価・解析における統計的な手法を検討し、最適な手法についてのアドバイスを行ないます。さらに、とくに大きな問題をはらむ方法を改良し、他のテーマ・サブテーマの研究者に新しい方法を提示します。

文責 矢原徹一 (プロジェクト代表 九州大学

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