[S9-5] 海域チーム

   海洋生態系は劣化が著しく、水産資源でも顕著な影響が指摘されている。また人間活動の影響は、沿岸域だけでなく外洋から深海にまで及んでいることが報告されている。海洋生物センサス(CoML: Census of Marine Life)により世界的な生物多様性の出現データが蓄積された。一方アジア周辺海域では、生物多様性の豊富さが示されたが、地域的なデータがはまだ不十分であり生態系劣化の原因解明と対策の立案を難しくしている。我が国は2012年まで生物多様性条約の議長国として、先に名古屋で行われた同条約のCOP10で海域の10%を保護区として設定することを目標に掲げた。また世界で6番目に広い管轄海域を保有し、かつ周辺海域の生物多様性が世界有数の豊かさをもつことなど、生物多様性の保全において世界をリードすべき立場にある。海域の保全では、まず科学的根拠に基づいて生態学的または生物学的に重要な海域(EBSA: ecologically or biologically significant area)を選択しなければならない。その重要海域から保護区のネットワークを設定するためには、さらなる科学的根拠が必要になる。また適切な保全策を立案するには、現状の正確な把握と多様性を減少させている原因を特定しなければならない。
 
 沿岸では、藻場やサンゴ礁が多様な生息環境を作り出し、濃密な生物多様性を維持している。一方、水深200mまでの浅い海は容積にしてわずかに3%しかなく、残りの97%は太陽の光が届かない深海である。そこには浅い海とは様子のちがう生態系が維持されており、多様な生物群集が生息している。気候変動の影響や海洋の酸性化、さらに深海底での鉱物資源やエネルギー資源の開発と汚染、投棄されたゴミなど環境の安全と水産資源への影響は沿岸から外洋および深海に広がる。この影響を調査するには、従来の枠組みを越えた体制が不可欠である。